写真 大雲院(鳥取市立川町) ※右が本堂、左が大師堂
現在、鳥取市立川町にある大雲院は、かつて鳥取東照宮の別当寺としてここ上町の樗谿公園にありました(2019.5.23.「やまびこのわ」)。鳥取藩内で最高の寺格を有した寺院であり、藩と寺院が取り交わす文書授受の窓口となって藩内寺院を取りまとめていました。
江戸期大雲院の主たる祭祀は東照宮に象徴されるように、徳川家康をはじめとする歴代将軍の祭祀をつかさどることです。現在も立川町大雲院境内に移築されて現存する大師堂に歴代将軍の位牌が安置されていることはあまり知られていないと思います。そのほか鳥取城内に出向いて歴代藩主の祈祷なども度々執行しています。
一般的には城下の人々と大雲院の接点は余り無いように思われがちですが、年末年始は城下の人々で大変にぎわったようです。その舞台、窓口となっていたのが、現存している大師堂なのです。
年末の大晦日には、大師堂にお籠りする人たちが大勢いたようです。江戸時代は数え年で年齢を勘定していましたので、大師堂でお籠りして正月を迎え、良い年にしようとしたわけです。また年が明けて正月3日の夜明け時にも群詣する人々が多かったと言います。その年の吉凶を占う御御籤をもらい受ける人々がとても多かったと言います。霊験があらたかで城下の人々が尊信したと言い伝えられています。大雲院にはきれいに摩滅した当時の御御籤の版木が大切に保存されています。(伊藤康晴)
【メモ】
江戸時代においては、歴代将軍の位牌は御霊屋に安置されていました。御霊屋は現存せず、現在は大師堂に安置されています。
写真 御御籤の版木 ※画像は表裏反転にして掲載しています