2021.10.7

双六の上りは樗谿の鳥取東照宮 ~「新板 稲葉名所道案内廻双六」の魅力~

新板 稲葉名所道案内廻双六

写真 常設展示室【まなびのひろば】で「新板 稲葉名所道案内廻双六」をお楽しみください

 

江戸時代の終わり頃、鳥取城下智頭街道の「きや(木屋)」から出版された因幡国の名所を廻る双六です。原本は着色されていないので、常設展示リニューアルに合わせて当館で着色しました(原本は鳥取県立博物館)。

双六は江戸時代にお江戸日本橋を起点にした「五街道」をはじめとする「道中双六」を中心に普及した娯楽玩具です。街道筋や宿場の風物を取り上げたものが多いようです。サイコロを振り、誰が最初に「上り」(ゴール)に到着するかを競います。

双六右下の「ふりはじめ」(振り出し)は鳥取城大手口の擬宝珠橋です。擬宝珠橋は因幡国の里程計測の起点であり、いわば鳥取の日本橋にあたります。藩主の参勤交代の出発地にもなっていました。ここをスタートに因幡国の神社や寺院など、各地の旧所・名跡を旅します。中には今となっては忘れられている名所もあるようです。

真ん中に穴の開いた銭形の印のあるところに止まるとお賽銭をしなくてはいけません。また茶屋や温泉場の▲の印に止まると1回お休みですが、「よし岡(吉岡温泉)」に止まると「▲三日とうりう(逗留)」とあり、3回休みになってしまいます。昔の吉岡温泉は湯治客が1~3週間の長期滞在する人が多かったからでしょうか。

最後の方は鳥取城下の社寺をめぐります。「ながた」は当時樗谿の入口付近に鎮座した長田大明神(現在の長田神社)のことです。「大げば」(大下馬)から東照宮の鳥居をくぐり、「御上り」は「東照宮」になっています。東照宮は因幡国を代表する名所で、鳥取城下で最高格式の神社だったのです。

(伊藤康晴)

 

【メモ】

双六は常設展示室「まなびのひろば」(無料ゾーン)に常設していますのでどなたでも遊べます。江戸時代のお金「寛永通宝」の実物を使って体験することができますので、ぜひ関心のある方は「まなびのひろば」にお越しください。

 

  • 「新板 稲葉名所道案内廻双六」の内容
順序 表記 場所 備考
ふりはじめ(振り始め) 擬宝珠橋(大手橋) 鳥取城下の里程の起点
ちづばし(智頭橋) 智頭街道智頭橋
とミやす(富安) 富安天満宮(富安村)か 北野神社
八まん(八幡) 倉田八幡宮(馬場村) 元禄4年の石鳥居
かた山(片山) 分八幡宮か 片山神社か
もちがせ(用瀬) 三角山神社
はせ(長谷) 長谷寺(長谷村)か
ざこうじ(座光寺) 座光寺(菖蒲村)
まつかミ(松上) 松上大明神(松上村) 松上神社
志かの(鹿野) 勝宿大明神(寺内村) 現 加知弥神社
ミとく(三徳) 三徳山三仏寺投入堂
ミくま(御熊) 三倉柱大明神(柱大明神) 現 御熊神社
よし岡(吉岡) 吉岡湯村 現 吉岡温泉町
つゞらを(防己尾) 岩本村 現 防己尾城跡
かろ(賀露) 加路番所(賀露村) 現 賀露神社下
はまさか(浜坂) 浜坂御茶屋か塩御蔵(浜坂村) 現 浜坂7丁目付近(新田)
まる山(丸山) 丸山茶屋(湯所村) 現 丸山町
まに(摩尼) 摩尼寺門前(覚寺村)
ちごがまつ(児が松) 摩尼山児が松(覚寺村)
七やま(駟馳山) 駟馳山穴観音(大谷村)
まきたに(牧谷) 弥長神社か(牧谷村)
石うじ(石牛) 鳥越村 「鸚鵡石」とも
石どう(石堂) 岡益村 宇倍野陵墓参考地
にい(新井) 新井の石舟(新井村)
わかさ(若桜) 弁財天(三倉村)
一の宮(因幡一の宮) 宇倍神社(宮下村)
いなば山(稲葉山) 法美郡稲葉山
たけしま(竹嶋) 竹嶋天神(立川村) 現 稲荷神社
こやす(子安) (子安稲荷か) 子安稲荷か
ひぢり(聖) 聖大明神(行徳村) 聖神社
大もり(大森) 大森大明神(田島村) 大森神社
あたご(愛宕) 愛宕将軍地蔵大権現(湯所村) 愛宕神社跡地
ようじいん(養寿院) 養寿院(湯所村) 現 最勝院(明治3年合併)
ながた(長田) 長田大明神(上町) 長田神社(東町に移転)
大げば(大下馬) 樗谿公園入口付近(上町) 現鳥居は奥に移転
東照宮御上り 鳥取東照宮(上町)