現在、やまびこ館では特別展「鳥取藩主池田家の養子たち」を開催中です。
今日は、その中の資料の1つをご紹介します。
それは「溶姫様御詠」(金沢市立玉川図書館近世史料館蔵)です。
溶姫は、第11代将軍徳川家斉の娘で、鳥取藩第11代藩主池田慶栄の実母です。慶栄は、当時としては珍しく、藩主正妻の子として生まれています。
慶栄は嘉永3年(1850)5月23日に鳥取藩の伏見屋敷において死去しました。溶姫は慶栄の死を大変悲しんだとされ、慶栄の死を「夢かうつゝか、更に誠ともおもわれす」と述べるなど、その死を受け入れることが出来ず、悲嘆にくれていました。この資料には歌が五首書かれており、「妙法蓮華経」の文字が歌の頭文字になっており、若くして逝ってしまった慶栄を弔うために詠まれたものでしょう。また溶姫は、この資料の中で「附添参りたる人々の心尽しいかゝあらん」(慶栄に付き添っていた人たちは、手を尽くしてくれたのでしょうか?)と述べるなど、鳥取藩士たちの対応に疑問をしめしており、さらに慶栄の死はあまりに急であったため、鳥取藩士らによる毒殺説が流布したとされ、溶姫はそれを信じていたともいわれています。
あまりにも急な息子の死に悲しみ、困惑する1人の母親の姿があらわれています。
このほかにも、池田慶栄ら、鳥取藩主池田家に養子として迎えられた人びと、そしてその実家に関する資料などを多数展示しています。
ぜひ、この機会にやまびこ館まで足をお運びください。