2025.10.13

【特別展資料紹介⑤】池田慶行と武将読巻図

鳥取藩第10代藩主池田慶行は東館池田家の出身で、前藩主斉訓の養子として本家を相続した人物です。馬術や放鷹などの武芸を好む一方、詩や絵を得意とし、絵を鳥取藩の江戸詰の御用絵師であった沖一峨に学んでおり、現存する作品を複数存在します。

 

そうした作品の中の1つに「武将読巻図」(鳥取市歴史博物館蔵)があります。慶行が亡くなる前年に江戸で描かれたもので、古典的な甲冑を身に着けた武将が、床机に座している姿を緻密に描いています。

これだけですとこの絵に描かれた武将は誰なのか、ということがわかりませんが、慶行による賛にそのヒントがあります。そこには「忠勇節烈国士無双」と書かれており、これは水戸藩主徳川光圀とも親交の篤かった朱舜水が楠公碑に寄せた賛の一節であり、この武将は楠木正成であることが示唆されています。

鳥取藩の歴代藩主は参勤交代の途中で湊川の楠公の墓に参詣することがあり、楠公への崇敬が篤く、系図上も楠木正成に結び付けられています。『寛政重修諸家譜』などの系図類には、池田家の先祖とされる南北朝時代の池田十郎教正は、楠木正成の子・正行の遺児とされており、池田家が楠木正成の血を引いているとされています。

この真偽は不明ですが、そうしたことから慶行はこの絵を描いたとも考えられます。養子としてイエを相続した慶行。池田家の血筋に関することにも意識が向いていたのかも知れません。「武将読巻図」は、現在開催中の「鳥取藩主池田家の養子たち」展で展示しておりますので、ぜひこの機会にご覧下さい。